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離乳食とアレルギー
投稿者 j_sugimoto 日時 2016年3月21日
アレルギーに関して外来で話が出ることが多いものに、「離乳食前にアレルギー検査をしたい」というご希望があります。
以前にも書いたことがあると思いますが、アレルギーの診断は症状から診断するということが基本であり、大原則です。
離乳食を開始する際には、当然ながら、まだ食べたことのないものばかりです。その中から、食べさせるものをすべて血液検査することは不可能ですし、その必要もありません。
お子さんの食物アレルギーで症状が出やすいものとしては、卵、小麦、牛乳、大豆などがあります。また、たいていの日本人にとっては、米は主食で毎日食べるので、よほど強い症状でなければ気づかれにくいものです。
離乳食を始めるにあたって、それらについて検査してみることは、お兄ちゃんやお姉ちゃん、ご両親のどちらかなど、近い親類に強い食物アレルギーの人がいる、などの、リスクの高いお子さんにとっては、一定の意味はあると思います。
しかし、検査はあくまでも「参考」なので、最終的には食べてみてしっかり症状があるかどうかをみることで診断、ということになります。
離乳食の開始にあたっては、まず米(おかゆ)を、最初は「おもゆ」ひとさじから与えて、慣れてきたら少し米つぶも食べさせて、その後は、野菜やイモ類、大豆、魚、とすすめていくのが日本では標準的でしょう。
初めて食べるものは、加熱・加工されたものをひとさじから始め、様子を見ながら少しずつ増量してください。
初めてのものを食べる時は、平日の日中の診療所や病院があいている時間に始めるのがおすすめです。体調に変化があった時に、すぐに受診できるからです。
従来、アレルギーの原因となりやすいといわれている食物については、摂取開始を遅らせることが推奨されていましたが、現在では遅らせることでアレルギー発症のリスクを下げるという根拠はなく、食品によってはかえってアレルギー発症のリスクが上がってしまうという報告もあるので、あまり遅らせすぎるのも良くないと考えられています。
血液検査は参考にはなりますが、決め手にはなりません。
時々、全く症状が出ていないのにもかかわらず、離乳食開始前に血液検査を実施し、その結果をみて、少し数字が出ているからと、離乳食の食品に制限をし、偏った栄養摂取となっている場合があります。
過剰な食品の除去は、逆にお子さんの健康に害となります。
繰り返しになりますが、血液検査も一定の意味はありますが、あくまでも、アレルギーは症状から診断します。いつ、何を食べた時にどのようなアレルギー症状が出ているのかを正確に把握し、受診時にきちんとお伝えいただくことが、アレルギーの正確な診断と治療につながります。
見張りいぼ、切れ痔、便秘
投稿者 j_sugimoto 日時 2016年3月13日
太くかたい便が肛門を通るときに、肛門の粘膜や皮膚が切れてできる肛門の裂け目(裂傷)のことを裂肛といいます。いわゆる「切れ痔」です。
これは、赤ちゃんやこどもの血便の原因としてもっとも多いものです。
肛門の粘膜にできた傷はふさがるのが早いので、外から見てもわかりにくいことが多いのですが、排便のたびに何度も繰り返して裂けると、次第に裂け目が深くなって、炎症を起こします。
痛みのために排便を嫌って我慢するようになって、なかなか便が出ないと、さらに便がかたくなって、排便のたびに出血したり、おしりの痛みが強くなる、だからますます我慢して便が固くなる・・・という悪循環に陥ります。
慢性的に裂けて炎症を起こして、ということを繰り返すと、肛門の裂け目のまわりの皮膚が「いぼ」のように盛り上がってきます。
これを「見張りいぼ」といいます。
「いぼ」と名前がついていますが、これは「いぼ痔」ではなく、「切れ痔」です。少しややこしいですね。
腫れて明らかに痛がっているなど炎症が強い場合は、軟膏などを使用することもありますが、通常は「見張りいぼ」そのものへの治療が必要なことはあまりありません。
便秘やかたい便がそもそもの原因であることが多いため、排便のコントロールを行い、肛門部の清潔を保つことが大切です。
排便が順調になれば、裂傷の繰り返しがなくなり、「見張りいぼ」も小さくなってきます。
治ったあとに肛門のひだ・皮膚のふくらみが残ることもありますが、手術などの必要はまずありません。
お子さんのひどい便秘、便に血が付いている、排便時の痛み、肛門周囲の「いぼ」などの症状が気になったときは、受診してご相談ください。
ワクチンはお早めに
投稿者 j_sugimoto 日時 2016年3月6日
幼稚園・保育園の年長さんは麻疹風疹(MR)ワクチンの 2期(2回目)、小学校 6 年生は二種混合(DT)ワクチン、接種はお済みでしょうか?
母子手帳を確認して、まだの方はお早めに。
当院は、月・火・水・金の 14:00-16:00 の昼診は完全予約制の、予防接種・乳児健診専用の時間になっています。
昼診の時間帯がご都合が悪い場合は、上記ワクチンに限らず、朝・夕の一般外来の時間帯でも在庫があるかぎり対応しますので、お電話あるいは窓口でご相談下さい。
現在はインフルエンザやロタウイルスなどが流行中ですので、感染予防の観点からは、専用の時間帯である昼診がベストですが、当院の待合は感染症と非感染症にスペースが別れていますので、朝診・夕診の時間帯でも、「待っている間に病気がうつってしまう」という心配はかなり少ないと思います。
春休みに入ってから、と思っていると、思わぬ病気のせいで、うてなくなってしまう可能性があります。例えばインフルエンザにかかってしまった場合、治癒した日から2週間以上あける必要があります。
ワクチンは、できるだけ早いうちに、うってしまいましょう。
B型肝炎ワクチン定期接種化決定
投稿者 j_sugimoto 日時 2016年2月11日
B型肝炎ワクチン定期接種化(無料化)のお話です。
以前から、今年10月から定期接種化という話が出ていて、化血研の問題からどうなることかと思っていましたが、予定通りに10月開始ということに決まったようです。
また、報道で明記されていないものも多いですが「平成28年4月以降生まれの0歳児」対象になるようです。ということは、今すでに生まれていて「無料になるのを待とう」と思っている方は、対象外になるのでご注意下さい。
ここで気になるのがワクチンの供給体制です。今年の4月以降に生まれた赤ちゃんは、当然10月までは接種しないでしょう。となると、10月の接種開始時には、4~8月生まれの赤ちゃんが、いっぺんに受けようとすることになります。ワクチンの供給は、本当に大丈夫なのでしょうか?
足りなくなって困ることが予想されれば、普通に考えると、前もって国が対策してくれる筈なんですが、過去には、何の対策もなされていなくてワクチン不足で大騒ぎ、ということは全く珍しくありませんでしたので、どうなるのか気になるところです。
B型肝炎は、基本は性行為あるいは血液を介してうつる病気なのですが、時には知らぬ間に家庭内や集団生活の場で感染して、感染者になっていることがあると言われています。
お父さん、お母さん、(同居の)おじいちゃん、おばあちゃんなどの大人の方で、今までにB型肝炎ウイルスの検査をしたことがない方は、ご自身のためにも赤ちゃんにうつさないためにも、一度検査(肝炎ウイルス健診)で確認しておかれることをお勧めします。小児科なので当院では行っておりませんが、20歳以上で過去に肝炎ウイルス検査を受けたことのない方には、公費で検査を受けられる制度もあります。
なお、「お知らせ」で数日前に書かせていただきましたが、自費(任意接種)でのB型肝炎ワクチンの接種予約は通常通りの体制で再開しています。
病気の時のお風呂について
投稿者 j_sugimoto 日時 2016年1月24日
外来でよく聞かれる質問の一つに、「お風呂は入っても良いですか?」という質問があります。
病気の時には、お風呂にはいってはいけないとよく言われ、広くそう信じられています。しかし、実は科学的な根拠はあまりありません。
世界中でも病気の時のお風呂の習慣は様々で、子供が風邪をひいて熱がある時に、熱いお風呂に入れる国や地方もありますし、水やぬるま湯のお風呂に入れる地方もあります。
それぞれある程度は理にかなっていて、
熱いお風呂に入れるのは、熱が出るということは体が熱を欲しているからだ、それなら熱いお風呂に入れてしっかり熱を上げよう、という考え方。
水やぬるま湯のお風呂に入れるのは、熱が出ているから冷やして熱を下げよう(クーリング、冷却)という考え方。
熱が出ている時に熱いお風呂に入るのはしんどいし、水やぬるま湯のお風呂に入ると寒気がして、ますます熱が上がってしまう、という側面も考えられることと、日本人には体質的に熱性けいれんという、熱が出ることによってけいれんを起こす体質を持っている人が多いことから、日本では「無難に」病気の時、特に熱がある時には、お風呂は入らない、という習慣が広まったのだと思われます。
また、以前は内風呂が少なく銭湯などの外風呂の利用が多かったため、病気の子供には衛生状態が気がかりだったり、行き帰りに体が冷えたりということも理由としてあったのかもしれません。
一般的に入浴には、
1)皮膚を清潔にし、皮膚呼吸を助ける
2)皮膚に刺激を与え、血行をよくする
3)身体を温め緊張を解きほぐす
4)精神的疲労を取り除く
といった効果があります。
ですから、入れるのならできるだけお風呂には入った方が良い、と私は考えています。
そこで、風邪などの病気の時の入浴は、以下のような点に気をつけて下さい。
・発熱の程度が強くて、つらそうな時には、入浴はひかえましょう。逆に言えば、多少の熱があっても、元気があって顔色も良い場合には入浴して良いでしょう。
・熱性けいれんを起こしたことのあるお子さんは、熱がある時は入浴を控えた方が無難です。
・どこかが局所的に明らかに熱を持っていたり、赤く腫れていたり、ズキズキと痛いところがある場合は、お風呂は入らない方が良いです。
・発熱がなくても、本人が入浴をいやがる時には、無理に入れることはやめましょう。
・ひどい下痢の場合の入浴は、家族への糞口感染のリスクが高まりますので、控えた方が良いでしょう。あるいは最後に入浴するなどの工夫を。
・咳や鼻水がでていても、顔色がよく、食欲や元気もある場合は、入浴しましょう。
・お子さんの状態や様子をよく見て、お湯の温度や時間を加減してください。
・湯冷めに注意して、お風呂の後はすぐに布団に入るようにして下さい。
風邪をひいたら抗生剤?
投稿者 j_sugimoto 日時 2016年1月17日
抗生剤(抗生物質)というのはどういうお薬か、ご存知でしょうか?
かぜを早く治す薬でしょうか?
それとも、早く熱を下げてくれる薬でしょうか?
答えは、抗生剤・抗生物質とは、細菌「だけ」をやっつける薬です。ウイルスには全く効果がありません。
かぜや発熱の原因はいろいろありますが、そのほとんどはウイルスによるものなので、抗生剤は全く効きません。
みずぼうそう、おたふくかぜ、はしか、風疹、ヘルパンギーナ、アデノウィルス感染症、手足口病、ノロウイルス、ロタウィルス、突発性発疹、などなど・・・
小児科でよくみかけるこれらの病気は、みんなウィルスが原因なので、抗生剤は全く効きません。
抗生剤は、溶連菌感染症や、とびひなどの、細菌による病気にのみ効果があります。
実は、扁桃炎、気管支炎、中耳炎、副鼻腔炎などでも、ウイルスによるものも多く、その場合は抗生剤は効果がありません。もちろん、細菌によるものであれば、効果があります。
では、病気の原因がウィルスか細菌か分かるのか、ということですが、症状に特徴のある病気なら、比較的簡単です。
しかし、例えば、熱や咳や鼻水といった、いわゆる風邪症状だけ、というような場合は、その原因がウイルスか細菌かを見分けるのは、なかなか難しいです。
その為、例えば、熱や咳や鼻水が続いた場合に、経過をみながら検査 (採血やレントゲンなど)をして、細菌による感染症が強く疑われた場合などに抗生剤を使うことになります。
最初はウイルス性の風邪だったものが、長引くことで細菌が増えだして「こじれる」こともあります(2次感染といいます)。そうなれば抗生剤を使用します。
それなら初めから、「念の為に」抗生剤をのんでおけば良いんじゃない?と思われた方もおられるかもしれません。
ウイルスか細菌かはっきりしないなら、抗生剤をのんでおけば安心でしょ、というふうに思われたかもしれません。
しかし、それは、よくありません。
なぜかと言うと、
まず第一に、常在菌が減ってしまいます。
常在菌とは、体内にいつもいる細菌で、いわゆる善玉菌などのことです。
これらの細菌は、悪い病気の細菌から私達の体を守ってくれています。しかし、抗生剤を安易に使用してしまうと、この常在菌たちが死んでしまうので、かえって感染症にかかりやすかったり、治りにくい身体になってしまいます。抗生剤を飲んで下痢をした経験のある方も多いと思いますが、これも、腸内の善玉菌が減ってしまったからです。
第二に、耐性菌が増えてしまいます。
耐性菌とは抗生剤の効かない細菌のことです。抗生剤を使えば使うほど増えていきます。
そして、いざ肺炎になってしまった時に、耐性菌なので抗生剤を使っても効かない、ということになり、大変なことになってしまいます。
昔は、おそらくウイルス性の風邪だと思っても、抗生剤を「念の為」とか「とりあえず」などと言いながら、処方する医師・医療機関が多かったようです。
その為、薬をもらう患者さんの方も、抗生剤をのむことが当たり前になってしまい、「風邪は抗生剤のおかげで治っているのだ」という思い込みや、「抗生剤をもらっておけば安心」と感じる方が増えてしまったようです。
しかし、上に書きましたように、安易な抗生剤の使用にはデメリットもあります。
医師、特に私達小児科医は、患者さん一人一人に対して、抗生剤が必要かどうかをしっかり吟味しながら、丁寧にこまめに診療していくことが大切であると考えます。
また、病状に応じてこまめに再受診していただくことが、不必要な抗生剤の使用を減らすとともに、重い病気を見逃さないことにもつながります。
分からないことや疑問がございましたら、診察室でどうぞお気軽にご質問ください。
インフルエンザが出始めました
投稿者 j_sugimoto 日時 2016年1月11日
当院では、インフルエンザが先週からちらほら出始めました。A型もB型もです。どちらも同じぐらいの数の患者さんが、迅速検査キットで陽性になっています。
今年は暖冬といわれていますので、あまり大きくは流行しない可能性もあり、そうだと良いのですが、特に学校や保育園・幼稚園などに行かれているお子さんは、どうしても感染の機会が多くなりますので、ご注意ください。
インフルエンザか否かの診断は、症状、流行状況、迅速検査などで総合的に診断します。
インフルエンザの症状は、突然に始まる発熱・悪寒と、体の痛みです。嘔気・嘔吐で始まることもあります。鼻汁・くしゃみ・咳などの感冒症状は、熱と痛みよりも数日遅れて始まることが多いです。
痛みを感じる部位は、頭、喉、腹、背中、肩、腰、関節、筋肉など、全身のどこにでも感じられます。痛みは熱とだいたい同時に始まることが多いのですが、熱よりも先に痛みから始まることもあります。
受診していただくタイミングですが、必ずすぐに受診していただきたいのは、肺炎や脳炎・脳症を示唆する症状がある場合です。つまり、呼吸困難があったり、意識がおかしく朦朧としている場合、痙攣がとまらない・痙攣を繰り返す場合、何度も激しく嘔吐している場合には、急いで受診していただく必要があります。
そのような症状がなくても、もちろん、可能であれば、早期に診断を下して治療を開始したいのですが、残念ながら、発症したばかりでは診断が難しいことが大半です。
検査で診断をはっきりさせたり、抗インフルエンザ薬での治療効果を期待して受診されるのであれば、発症12時間から24時間ぐらい経ってから受診していただいて、検査をして、インフルエンザの確定診断をして、治療を開始するというのが望ましいです。
なお、発症後48時間以上経過してしまうと抗インフルエンザ薬の効果が著しく乏しくなってしまうので、それまでには受診して下さい。
上にも書きましたように、インフルエンザの診断は、総合的に判断して診断します。必ずしも迅速検査が必要なわけではありません。
例えば同居の家族にインフルエンザの人がいる状況で、体の痛みと発熱が始まった場合など、検査を行わずにインフルエンザと診断して薬を処方することもあります。状況からインフルエンザが強く疑われる場合で、早期の治療開始を望まれる場合には、発症後12時間たっていなくても、一度受診してご相談下さい。状況と診察所見によって、総合的に判断させていただきます。
あけましておめでとうございます。
投稿者 j_sugimoto 日時 2016年1月4日
あけましておめでとうございます。
当院は1月4日から通常通りの診療を開始しました。
今年もよろしくお願い致します。
年末のご挨拶
投稿者 j_sugimoto 日時 2015年12月30日
当院は、12月29日(火)で2015年の診療は終了とさせていただきました。
皆様にとって2015年はどのような年でしたでしょうか。
当院にとって2015年は、始まりの年、かけがえのない年でした。
5月に開院し、当初は慣れないこともたくさんあり、時々は戸惑いながらも、様々な患者さん・お子さん達の診療を行って参りました。
当院に足を運んで下さった皆様、誠にありがとうございました。
来年が、皆様にとって佳い年となるよう、お祈り申し上げます。
来年も引き続きよろしくお願いいたします。
それでは、良いお年をお迎えください。
風邪薬の処方日数
投稿者 j_sugimoto 日時 2015年12月24日
今日は、いわゆる風邪薬の処方日数などについてのお話です。
通常、いわゆる「風邪薬」つまり咳・鼻・痰を抑えるための薬の場合、4日間分くらい、休日などの関係で多少増減して、3~5日ぐらいの日数で私は処方しています。
症状によって、あるいはお伺いしたご都合によって、1週間処方することもあるし、悪化することが心配だから1~2日後に再診するようにお話して、短めの処方にすることもあります。
(もちろんアトピーや喘息などの慢性疾患では2~4週間、場合によっては2ヶ月などの長期処方をすることもよくあります)
この時期は、年末年始のお休みの関係で、長期処方を希望される方も多くなりますし、お休みの間に「明らかにただのカゼと思われる症状で」救急センターを受診するのもお互いに(救急センターも、患者さんも)大変なので、ある程度は長めに処方することになります。
そういう事情を考慮しながら処方日数は決めていますが、普段から、風邪で受診された際に、「できるだけ長く薬を出して欲しい」と言われることは、よくあります。2週間とか3週間、時にはそれ以上の処方を希望されます。風邪薬で、です。
しかし、年末年始のお休みなどの特別な事情がある時は別として、やはり、一般的なカゼの場合、4~5日以上、症状が続く時は、また受診していただいた方が良いです。
長引く場合は、初期には風邪に見えても実は違う病気の可能性もあるし、初めは実際に風邪であっても、途中から”こじれて”肺炎などになっている(2次感染と言います)可能性もあるので、検査や治療の追加が必要かもしれません。
漫然と薬をのんで、実はどんどん病気が悪化していた、などということがないように、「これで治らない場合はまた受診して下さいね」という意味を込めて、風邪薬は数日分しか処方しないようにしています。
保険診療としても、いわゆる「風邪薬」は1週間程度までの処方しか認められないことが多いです。
また、「熱が出たら抗生剤を飲むようにいつもの(今までの)かかりつけの主治医から言われているから出して欲しい」という方も時々いらっしゃいます。
一般論としては、熱が出るから抗生剤、というのはナンセンスです。
熱の原因がウイルスであれば抗生剤は必要ない(のまない方が良い)し、細菌であれば必要だからです。熱の原因をある程度見極めて治療を選択する必要があります。
ただし、先天異常や持病のために、「熱が出たら抗生剤」という対応をせざるを得ないお子さんもいます。
そのような事情がある場合には、病名や「熱が出たら抗生剤」という話になるまでの経緯を教えて下さいね。その結果、必要と判断できれば、処方します。
診察の時に、できるだけ私の方から薬についても説明するように心かげているつもりではいますが、わからない・納得のいかない場合には、どの薬をいつまで続けるのか、あるいはどうなったら止めて良いのか、また、なぜいつもと違う薬になるのか、あるいはなぜ治らないのに薬が変わらないのかなど、疑問があれば、ぜひ、聞いて下さいね。
ワクチンについて(化血研に関連したお話)
投稿者 j_sugimoto 日時 2015年12月11日
「化血研」というワクチンメーカー(正式には「化学及血清療法研究所」)の製造する、数種類のワクチンが、出荷停止(自粛)となっていることは、すでに大きく報道されているので、ご存知の方も多いと思います。
最初はインフルエンザワクチン、次いで4種混合ワクチンの出荷停止による在庫不足で、現場はかなり混乱していました。
インフルエンザワクチンと4種混合ワクチンについては、出荷が再開され、通常の流通体制にもどっているので、現在は在庫がなくて打てないということはありません。
しかし、日本脳炎ワクチンとB型肝炎ワクチンは、現在も出荷停止が続いており、いつ再開されるかまったく見通しが立ちません。
当院では、もともと日本脳炎ワクチンは他社の製品を採用していましたので今のところ在庫も確保できていますが、日本全体でかなりの在庫不足になっている状態ですので、近い将来、接種に支障が出る可能性があります。
また、B型肝炎ワクチンは、もともと他社製品がほとんどないため、極端な在庫不足になっており、既に当院でも、新規の方の接種の予約は停止させていただいております。
(当院で1回目あるいは2回目を接種された方の、次回の接種用のワクチンはなんとか確保できる見込みです)
何人かの保護者の方が、「このメーカーのワクチンを接種しても大丈夫なんですか?」と心配されていましたが、ワクチンそのものは、ものすごく厳しい国家検定(品質試験のようなものです)を全てクリアしていますので、医学的には問題はありません。
もちろん、いくら医学的に問題ないと言われても、気分的にすっきりしないお気持ちはわかりますが・・・。
私が思うことは、
化血研は承認を受けた製造方法を勝手に変更し、それを組織的に隠ぺいして来たこと、それが明るみになったことにより、ワクチンを含む生物製剤への信頼が大きく揺らぐ事になったわけで、その責任は極めて重大です。ですからもちろん、それに対しての罰を受けるのは当然です。
しかし、ワクチンが供給されない事になって、お子さんたちが不利益を被る事の無い様に、国もしっかりとした対応をして欲しいと思います。
ワクチンが接種できなくて病気になってしまったら、一体誰が責任を取ってくれるんだ、と思います。
そういうわけで、B型ワクチン接種に関して、結果的に接種ができず、お子さんたちにご迷惑がかかるのが心苦しいのですが、当面は新規の予約は停止させていただきます。何卒ご理解くださるよう、お願い致します。
ヘルペス性歯肉口内炎
投稿者 j_sugimoto 日時 2015年11月29日
「ヘルペス性歯肉口内炎」という病気があります。
この病気は、単純ヘルペスウイルス(主として1型)に初めて感染した時に発症します。
乳幼児期に比較的多く見られます。
単純ヘルペスウイルスに感染しても、不顕性感染と言って、何も症状がない人の方が多く、この病気の症状が現れるのは10%以下だと考えられています。
潜伏期間は約1週間(2~14日)です。
小児科では、年に何人かはこの病気のお子さんを診ます。
症状は、急な高熱で発症します。
発熱は短くて2日程度、長いと1週間近く続きます。
最初は発熱だけですので、この段階で受診しても特に他に所見はなく、「風邪でしょう」という話になることが多いです。
その後、次第に、歯肉口内炎(歯肉が発赤・腫脹し、疼痛があり、出血することもあります)となります。歯肉炎と口内炎がはっきりしてくるのは、発熱して3日以上経過してからのことが多いです。
ですので、口内炎がたくさん出来た段階でまだ熱が続いている場合と、解熱してから口内炎がはっきりしてくる場合があります。
歯肉口内炎ができた段階で小児科を受診していただければ、診断は容易です。
舌にも、潰瘍が生じることがあります。
また、口唇や口の周囲の皮膚に小水疱が現れることもあります。
最初の発熱から1週間を超えたあたりで急速に症状が回復することが多いです。
治療は、特に薬を使わなくても上記のように1週間あまりで自然に回復することが多い病気ですが、水痘の時と同じ抗ウイルス剤で、症状が軽くなったり治るまでの期間を短くすることが期待できるため、まだ熱が続いていたり、歯肉口内炎の程度と時期によっては、抗ウイルス剤を処方します。
また、歯肉口内炎がひどくて水分をとれなくなった場合は、点滴や入院が必要になる場合があります。
この病気になった時は、脱水にならないように十分に水分をとることが何よりも大切です。
食事は無理に食べさせないで、飲みやすいものなどを与えるようにしましょう。
熱いもの、堅いもの、辛いもの、しょっぱいもの、すっぱいものは痛い(しみる)ので、冷たいもの、柔らかいもの、やや甘いものなど、具体的にはプリン、ゼリー、アイスクリーム、豆腐、ヨーグルトなどの、食べやすいものを与えてください。
とにかく痛いので、歯みがきは、良くなるまで中止してください。
熱がなくなって、水分が十分に取れて、食べ物がある程度食べられるようになってから、保育園や幼稚園に行きましょう。