麻疹のニュース
恐ろしいニュースです。
麻疹で発熱後の発疹が出現した日に、大きな規模のコンサートに行った19歳の男性がいた、というニュースがありました。
参照:麻疹感染の男性が巨大コンサートに参加…厚労省、感染拡大の注意喚起(https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20160825-OYTET50041/ )
麻疹は、空気感染する、感染力が非常に強い感染症です。このため、同じコンサートに参加した他の人などにも、二次感染の発生が心配されています。
コンサート会場、あるいはその前後の交通機関、あるいはコンサート会場以外にも件の男性が立ち寄った場所などで、他の人に感染させてしまっている可能性があります。
報道されている以上の情報はありませんので、詳細はわかりませんが、件の男性は兵庫県西宮市内在住で、8月14日に千葉市の幕張メッセで開かれた巨大コンサートに参加しており、13~15日に東京都内、神奈川県内も訪れたということですので、かなり広範囲にウイルスを撒き散らしているであろうことは想像できます。
麻疹はワクチンが非常に有効な病気ですので、ワクチン接種しておりちゃんと抗体ができている人には、感染しません。もちろん、一度かかったことのある人にも感染しません。
ということで、感染が拡大するかどうかは、件の男性と接触のあった人(空気感染しますので、近くを通っただけの人も含む)の中に、ワクチン接種済だが抗体が十分にできなかった人、できた抗体が消えてしまった人、ワクチン未接種の人が、どれだけいたか、が鍵になります。
日本の麻疹は、2015年3月27日に「排除状態」と認定されていました。
「排除状態」というのは、国内での発生が3年以上抑え込まれていることを条件に、WHOによって決定されます。
しかし、世界には麻疹が抑え込まれていない国がまだいくつもあります。
だから、日本では「排除状態」だからといって、ワクチンを打たなくても良い、という話にはならないわけです。
かつての天然痘のように、世界中が「排除状態」になってはじめて、もうワクチンは打たなくても良いのでは、という話になります。
麻疹といえば発疹のイメージがあると思いますが、通常、発疹が出てくるのは発熱後3~4日たってからです。
麻疹ウイルスに感染すると、10日前後(8~14日)の潜伏期間を経て、まず、カタル期と言われる時期に入ります。
この時期には38~39℃の発熱が続いて、全身倦怠感、上気道炎症状(咳や鼻汁などの風邪症状)、結膜炎症状が出現、次第に増強します。
乳幼児では下痢、腹痛等の腹部症状を伴うことも多いです。
実は、カタル期には、上記の症状だけで、診察しても、風邪でしょう、という話になることが多いです。
頬粘膜(口の中)に、コプリック斑と言われる小さな白い斑点が出来ることが特徴的で、これが確認できれば麻疹の診断ができます。
しかし、コプリック斑が出来ないことも多く、できている期間も短いため、診察で確認できないことも珍しくありません。
カタル期に次いで、発疹期となり、全身に発疹が出てきます。発熱も40℃を超えることが多いです。
その後、3~5日たって(発熱から1週間ぐらい)、回復期に入ると、発疹は退色し、発熱もなくなり、風邪のような症状も軽快していきます。
麻疹は合併症が多く、約30%の割合で合併症がみられます。主なものは、肺炎、中耳炎、腸炎、クループなどがあります。
また、頻度は低いですが、脳炎の合併もあります。
肺炎や脳炎を合併すると、死亡したり、回復しても障害が残ってしまうこともあります。
さらに、麻疹に特徴的な合併症に、「亜急性硬化性全脳炎(SSPE)」というものがあります。
これは、麻疹罹患後平均7~10年で発症します。すっかり元気になって、何年もたって、麻疹のことなどすっかり忘れてしまった頃に発症するのです。
知能障害や運動障害が徐々に進行して、数か月で寝たきりになり、数年から十数年で死に至る、という病気です。
以上のように麻疹はとても恐ろしい病気なのですが、麻疹には、発症してからの直接の治療薬はありません。
したがって、予防接種をきちんと打って、感染しないようにすることが、唯一、かつ、とても有効な対策となります。
もし麻疹のワクチン(MRワクチン)をまだ打っていない方は、どこかでうつってしまう前に、可能な限り早く、1日でも早く、接種しましょう。