感染性胃腸炎の登園許可
感染性胃腸炎のお子さんが増えています。
いわゆる「胃腸かぜ」「お腹のかぜ」とも言われる胃腸炎です。
感染性胃腸炎は、「法定伝染病」ではありません(0-157など一部のものを除く)から、水痘やおたふくかぜのように明確な「出席停止期間」がありません。
「症状が回復し状態がよくなれば」登園許可できることになっています。
これではよくわからないので、一応の具体的な基準があります。
以下はあくまでも法律で明確に定められているわけではありませんが、常識的に判断されるべき目安です。
○発熱
発熱がある間はもちろんダメです。
また、朝下がって夕方からまた熱が上がる、ということはよくありますので、丸1日下がっているのを確認してから、次の日に登園許可、となります。
○嘔吐・嘔気
吐いている間はもちろんダメです。
吐いていなくても、食べない、というのは胃腸がまだ普通の状態ではありません。
「丸一日以上、嘔吐が治まっていて、食事をいつもの半分以上食べられて、食べた後も腹痛もなく気持ち悪いとも言わない」のが目安です。
○下痢
いつもの元気なときの便の性状と回数になるのが理想です。しかし、完全に戻るにはかなりの時間(1~2週間)かかることも多いですので、そこまで待つのは大変です。
少なくとも水様便の間はダメです。
では、軟便は?回数は?という話になりますが、「水様ではなく、健康な時と同じとまではいかなくてもある程度形のある便で、回数もほぼ元気な時と変わらない、あるいは丸一日便が出ない」ぐらいが目安です。
登園許可の基準は概ね上記のような状態なのですが、ぜひ知っておいて欲しいのは、症状がよくなっても、便の中などにはまだウイルスが出続けます。1ヶ月ぐらいの間、ウイルスの排泄が続く場合も珍しくありません。ですから、症状がすっかりよくなっても、胃腸炎感染中およびその後かなり長い間、トイレの後の手洗いをしっかりしたり、おむつ交換の時も感染予防(汚物処理・手洗いなど)をきちんとしないと、まだまだ感染源になることがあります。
胃腸炎の登園許可は、「感染力なしなので登園許可」ではないのです。
時々、「うつらない証明書を書いてもらうように」と言われる保育園があるようですが、あくまでも、人にうつさない、ということではないので、「感染しないという証明」は書けません。
「登園許可書」なら書けます。
「行ってもいいでしょう」とは言えるけど、「うつらない保証」はできません、ということです。
どうしても絶対にうつらない状態になってから登園して下さい、と言われてしまうと、じゃあ1ヶ月はお休みして下さい、と言わざるを得ません。それでは保育園の存在価値が問われると思いますが、それでも、どうしてもと言われた場合は、やむを得ないです。
また、「ノロウイルスの検査をしてもらいなさい」「ロタウイルスの検査をしてもらいなさい」などと保育園や幼稚園から指示を受けて受診される方もおられます。そして、保育園あるいは幼稚園の先生も、親御さんも、「ノロあるいはロタなら休まないといけないが、そうでなければ休まなくても良い」と考えておられる方が時々(結構)いらっしゃいます。
しかし、実際には、ノロであろうがロタであろうがどちらでもなかろうが、あるいはアデノウイルスであろうが、感染性胃腸炎と診断した時点で、上記の出席停止に対する基準・考え方は全く同じです。
現実的には、幼稚園・保育園は、うつる・うつらないとか、診断(何ウイルスか、など)に極端にこだわるのではなく、「病院・医院から登園して良いと言われるまではお休みして下さいね」という対応をしていただいて、検査するかどうかも含めて、判断をこちら(医療者)に任せていただくのがお互いのためだと、私は思っています。