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新型コロナと気管支喘息について

投稿者 j_sugimoto 日時 2021年6月27日

当院で特に治療に力を入れている病気に、気管支喘息があります。

今回は喘息と新型コロナについて、わかってきたことや考えられていることを、書いてみます。

気管支喘息を患っていることと新型コロナが重症化してしまうことにはあまり関連がなさそうとするデータがいくつも出ています。
そして、それ以上に最近言われているのが、どうやら、新型コロナに感染した人の中には、喘息を持っている人の割合が少なく、喘息があって適切に治療(コントロール)されている人は、むしろ新型コロナにかかりにくいか、あるいは、かかっても重症化しにくい可能性が、考えられています。
まだ、仮説のレベルですので、喘息のある人の方が重症化しにくい、と断言できるわけではありませんが、少なくとも、重症化しやすいということはない、とは言って良さそうです。

それはなぜか、というところで考えられている理由ですが、喘息の人が起こすアレルギー反応が、新型コロナが感染しないことに役に立っている、という仮説があります。
新型コロナウイルスは「ACE2」という受容体を足掛かりに体内に入って来ると考えられているのですが、このACE2受容体が、喘息のある(などのアレルギー反応を起こしやすい体質の)人では、減っているようなのです。
そのためウイルスの足掛かりが少なくて、ウイルスが体内に入ってきにくくなるのでは、と考えられています(あくまでも仮説です)。

また、いくつものデータで、喘息で適切に治療を行っている人の方が、そうでない(簡単に言うと治療をさぼっている)人よりも重症化しにくいことも示唆されています。

喘息治療で用いる吸入ステロイドには、気管支の炎症を抑え、空気の通り道を広げる作用があります。
新型コロナに感染して重症化すると、肺へ空気が入りにくくなってしまいます。一度潰れた肺胞は再度膨らむことが難しくなるため、肺の状態を悪くしてしまいますが、吸入ステロイドはこれに対し効果を示すのかもしれません。
また、吸入ステロイドは気道のACE2受容体を減らすという研究結果もあるため、ウイルスの侵入経路を減らす効果があるかもしれない、という仮説もあります。

あくまでも仮説の段階であって、具体的な証拠(エビデンス)はまだありませんが、喘息の治療で普段から吸入ステロイドをしっかり使っていることで、新型コロナに感染しづらくなったり、感染したときに重症化を抑えたりできる可能性があります。

また、内服薬に関しても、モンテルカスト(先発品ではシングレア、キプレス)が、内服していた人の方がそうでない人より新型コロナ感染率、重症化率が低かったというデータもでています。
同系統の薬であるプランルカスト(先発品ではオノン)でも同様の効果が期待されます。

以上、世界的にみて小児は感染者自体が多くないこともあって、データがたくさんあるのは殆どが大人(成人)、それも高齢者のデータなので、小児にも同じことが言えるかどうかは今後の検証が必要なこと、あくまでも現段階では殆どが「仮説」であることを留意する必要はありますが、少なくとも、喘息の人は、闇雲に新型コロナを恐れる必要はなく、今まで通りに、しっかりと適切に、薬を忘れないように気をつけて、治療を続けるのがとても大切だと言えると思います。
つまり、喘息のある人は、大人でも子供でも、しっかりと通院を続けて薬を正しく使い続けることが、結局は新型コロナから自分の身を守ることになるのです。