reservation.gif

新型コロナウイルスのワクチンについて(2021年6月13日時点)

投稿者 j_sugimoto 日時 2021年6月13日

最近、患者さん(正確にはその保護者)から、新型コロナワクチンに関しての質問が時々あります。

その時点での私の考えを交えてお話させていただいていますが、正直なお答えは、
「わからないことが多すぎて何とも言えません」
ということになります。

現在日本国内で使用されている新型コロナのワクチンは、新しいウイルスに対してのワクチンであるということだけでなく、ワクチンそのものが全く新しい、今までになかったタイプのワクチンです。
そして、通常は臨床治験を慎重に進めて様々な検討を繰り返しながら、実用化されるまでにはいくら早くても数年はかかるものですが、世界的なパンデミックという特殊事情があるため、新型コロナのワクチンは、十分な期間の治験を経ずに実用化されています。
そのため、議論や判断できるだけのデータがまだあまりないので、ほとんどのことに対して、わからない、としか言いようがありません。

現状で言えることは、

○短期安全性は、今のところどうやら大きな問題はなさそう

アナフィラキシーが従来型のワクチンと比べてやや多い印象はあるのと、接種後、特に2回目接種の翌日は発熱・頭痛・全身倦怠感が出る人はかなり多いです。
しかし、安全性に今のところどうやら大きな問題はなさそうです。
接種後数日以内の死亡や脳出血などの報告はありますが決して多くはなく、それらの症状とワクチン接種との因果関係もはっきりしていません。

○長期安全性は全く不明

長期の安全性は長期間経たないとわかりません。
例えば10年後には「とても安全なワクチンです」と言えるようになっているかもしれませんが、打った人がみんな、とんでもない副反応に悩まされている可能性もないとは言えません。
逆に、10年後には、たくさんの素晴らしい効用があるからみんなぜひ打ちましょう、赤ちゃんにも積極的にうちましょう、となっている可能性もあります。
現時点でそれは全くわかりません。

○効果は、少なくとも短期的には、ある程度はありそう。長期的には不明。

海外のデータ(イスラエルやイギリスやアメリカ)では少なくとも短期的には、感染の予防と重症化の予防に関して、かなり高い効果があるようです。
日本での効果の検証はまだ進んでいません。これからです。
ただし、2回接種が終わってから新型コロナに感染、さらには重症化した報告もありますので、「ワクチンを接種すれば安心」とは考えない方が良さそうです。
あくまでも「感染や重症化の確率を下げる」ものであると理解して下さい。
ワクチン接種後も、手洗い・マスクなどの感染予防対策は必要です。
ワクチンをうったらマスクをしなくて良くなるわけでは決してありません。
また、短期的には感染予防効果はかなりありますが、長期的には不明です。
抗体依存性感染増強(Antibody-Dependent Enhancement:ADE)(ワクチンをうったせいでかえって感染したり重症化したりしやすくなってしまう)という現象が、懸念されるリスクの中で最も有名なものですが、それ以外も含めて、長期的な効果もリスクも、まだ何もわかりません。

現時点で長期的にもリスクはない、と断言している人は、現在の医学理論から「予想・想像」しているだけです。
新型コロナのことではなく今までの歴史で考えてですが、ワクチンにしろ薬剤にしろ、それまでの理論上は安全と言われていたのに、あとから有害な副反応や副作用が出てきた事例は、過去にいくつもあります。


○効果の持続期間は不明

今のところ、少なくとも半年~1年程度はワクチンの効果が続くと考えられていますが、毎年追加接種が必要なのか、2年に1回なのか3年に1回なのか、5年に1回なのか、まだ、わかりません。

○他人への感染をどれだけ減らせるかも不明

「周りの人に新型コロナをうつさないためにもワクチン接種を」という言い方をする人もいますが、ワクチンを受けた人から他人への感染をどの程度予防できるかは、まだあまり分かっていません。
ワクチン接種により他人への感染を減らせるとするデータもありますが、無症候感染が増えて感染に気が付かずにかえって感染を広める可能性なども言われており、どの程度感染を減らせるのか減らせないのか、まだわかっていません。


○新型コロナに感染することの長期リスクも不明なことだらけ

新型コロナ感染症そのものが新しい病気です。
ですので、新型コロナにかかった後、長期的なリスク(後遺症など)がどうなるかも、まだあまりわかりません。
ワクチンを打った場合にも長期的な副反応があるが、自然にコロナに感染すると、もっともっと恐ろしい後遺症がある、という可能性も大いにあります。
実際に新型コロナに感染した人たちをみていると、分類上は「軽症」であった人でも、何ヶ月にもわたって強い倦怠感や味覚・嗅覚障害に悩まされていたり、罹患後ずっと体調が優れない、という人は結構います。


以上をもとに、自己責任で、接種するかどうかを判断する必要があります。
何せわかっていることが少なすぎて、接種するにしても、接種しないにしても、一種の「賭け」のようなものだと私は思っています。
賭け・博打だとしても、うつかうたないか、判断しないといけないのです。
感染して「ワクチンを打てば良かった」と悔やむ方がマシか、ワクチンで短期的あるいは長期的な副反応があって「打たなければ良かった」と悔やむ方がマシか、自分自身がどちらのほうがまだ納得できるか。
そういう視点から、よく考えて、ワクチンをうつかうたないか、決める必要があります。

上で、よく考えて、と書きましたが。
さんざん考えて悩んだ結果接種しても、なんとなく接種しても、接種という結果は同じです。
色々考えて徹底的に調べた結果接種を見送っても、なんとなく怖いから接種を見送っても、非接種という結果は同じです。
その結果を(良い結果も悪い結果も全て含めて)享受するのは、ご自身(あるいはお子さん)です。
また、他人に対して接種を勧める人も、接種に反対している人も、誰も、その結果に対して責任を取ってはくれません。
明らかにわかるのは、新型コロナに関してこれだけ何もわかっていない現状で、わかったような顔をして、質問してもいないのに自分から他の人に強く接種を勧める人も、あるいは接種しないように強く勧める人も、驚くほど無責任な人だなぁ、ということだけ、です。
接種する・あるいはしないことに対して責任を取れるのは、自分自身だけですから。
「もっとしっかり考えて、調べてから、決めないとだめよ!」と言う人だって、結局はわからないことだらけの中での決断をしているわけです。
考えるための材料に乏しい現状としては、「下手な考え休むに似たり」かもしれませんね。

私自身の、あくまでも「現時点での個人的な印象」としては、
・概ね60歳以上ぐらいの年齢の方は、ぜひ接種した方が良い。短期的な重症化を減らすだけでも大きなメリットです。
・40代~50代ぐらいは、多分接種した方が良いような気がする
・20~30代はかなり微妙・・・
 重篤な基礎疾患がある人は感染した時に重症化するリスクが高いから接種した方が良い気がするけど健康な人は様子見が良いかな?
 感染リスクの大きい仕事かどうかなど、生活環境にもよるかな。
・10代あるいはそれ以下は、もう少し長期のリスクと効果がはっきりするまで接種しない方が良い。
 「わからない」ことが多いのがリスクとして大きすぎる。
という印象を持っています。くどいですが、あくまでも現時点では、です。
特に小児(中学生以下)への接種に関しては、接種するリスクの方が明らかに大きいと、現時点で私は考えています。
あくまで私個人の「印象」であり、しかも現時点では、という条件付きです。参考程度にしてください。
どの年代の方に対しても、強く接種を勧めることも、強く接種を控えるように勧めることも、しません。
だって何度も書くように、「まだほとんど何もわからない」ですから。
何が最良の選択だったかは、後世の歴史が証明してくれることでしょう。

長文失礼しました。


なお、現時点で、当院では新型コロナワクチン接種を行う予定はありません。
ただし新しいことがわかったり社会情勢の変化などによって、突然予定がかわる可能性はありますので、その場合はこのホームページ・ブログや院内掲示などで随時、情報発信していきます。