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新型コロナワクチンの小児への接種について(2022年2月6日時点)

投稿者 j_sugimoto 日時 2022年2月6日

現在、主にオミクロン株による新型コロナウイルス感染症の急拡大がみられており、成人中心の感染症から、若年者や小児が中心の感染症に様相が変わっています。

日本での新型コロナワクチン接種は、12歳以上の小児に関しては昨年すでに開始されていますが、5歳~11歳の小児に対する新型コロナワクチンも今年の1月21日に特例承認を受けたため、3月以降に接種が開始されることが決まりました。
それに伴い、外来でもその年代の小児への新型コロナワクチン接種について、質問されることが増えています。
あくまでも現時点でのということになりますが、小児に対する新型コロナワクチン接種についての私(院長)の私見を書いておきます。

○小児の新型コロナウイルス感染症の殆どは軽症

これまでの新型コロナウイルス感染症による重症例や死亡例の多くは、基礎疾患のある高齢者でした。
小児のコロナウイルス感染症の症状は、ほとんどの場合、軽症で、いわゆる風邪症状や胃腸炎症状です。
「うちの子は40℃を超える熱が出た」
「咳き込んで夜が寝られない日が数日続いた」
「喉が痛くて飲み食いがほとんどできなくなった」
その程度の症状はある場合もありますが、軽症の範疇に入ります。
比較対象として、季節性インフルエンザと比べますと、少なくとも小児においては、現時点ではインフルエンザの方が重症化率・死亡率ともに高いです。
オミクロン株は、これまでのデルタ株などに比べて軽症の事が多いという海外の報告もあります。
それでも、感染者数が増えれば、一部の患者さんは重症化する可能性がありますので、くれぐれも油断は禁物です。


○小児間の感染が増えている

以前(デルタ株まで)は、小児は感染しにくいのが新型コロナの特徴でした。新型コロナウイルス感染のほとんどは成人同士の間で起こっており、感染した大人が家庭に持ち込むことで子どもが感染するというのが多く見られるパターンでした。
学校、幼稚園、保育園でのクラスターの発生は、会社など成人のクラスターの発生よりも非常に少なく、小児同士での感染拡大は少なかったのです。
しかし、オミクロン株は大きく変異したことによって、子どもや若年者にも感染しやすいため、小児間で流行拡大が起こっています。

○新型コロナウイルスワクチンは、長期的な副反応は全く不明

日本国内で現在使われている新型コロナウイルスワクチンは、メッセンジャーRNAワクチン(正確には修飾ウリジンRNAワクチン)という、今回初めて人類に対して使用されているワクチンです。
短期的な副反応としては、従来の他のワクチンと比べて、接種局部の腫れや痛みだけではなく、接種後の発熱、頭痛、倦怠感などの全身性の副反応が多くみられ、特に年齢層が若いほど副反応を呈する割合が高いことが知られています。
また、発生頻度は非常に稀ではありますが、心筋炎・心膜炎という重大な副反応もあります。
新型コロナウイルスワクチンは開発されて1年程度のワクチンであり、特に小児への接種を始めてからはごく短期間しか経過していませんから、現時点では長期的な副反応については不明です。
5歳~11歳の新型コロナワクチン接種の治験は、わずか2250人のデータをもとにしたものであり、重大な副反応を調べるには不十分と言わざるを得ません。

○オミクロン株への効果はあまり期待できない可能性がある

デルタ株までに比べ、オミクロン株へのワクチン効果の低下が各国で指摘されています。例えばワクチン接種の最先端をいくイスラエルでも、3回目接種が済んでいる人達へのオミクロン株による感染拡大がみられています。その他の国でも同様の報告が相次いでいます。
感染予防効果(感染しない、あるいは他人にうつさない効果)は、ほとんどないと考えて差し支えありません。「大切な人にうつさないためにもワクチンを」と言っている人が未だにいますが、そのような効果はほぼ期待できないと考えられます。
また、小児でのオミクロン株に関するワクチン接種後の重症化、入院率の低下などを示す正式なデータはまだありません。


○以上を踏まえた上での私(院長)の私見

重大な基礎疾患のあるハイリスクの小児の場合は、感染による重症化のリスクが高いことから、ワクチン接種を考慮する必要があると考えます。
基本的に健康な(重大な基礎疾患がない)小児への新型コロナワクチン接種の必要性は低いと考えます。

小児でのオミクロン株に対するワクチンの効果と副反応が現状では不明なことが多く、諸外国のデータをみても、小児には必要性は低いと考えられます。
少なくとも、拙速なワクチン接種の決定は不要です。
5歳~11歳のワクチン接種は3月以降から開始されますので、これからの流行状況、感染者の症状などもしっかりと見たうえで、本人と保護者が納得できるように、接種の是非をお決めください。
以前このブログにも書きましたが、最終的には、感染して「ワクチンを打てば良かった」と悔やむ方がマシか、ワクチンで短期的あるいは長期的な副反応があって「打たなければ良かった」と悔やむ方がマシか、自分自身がどちらのほうがまだ納得できるか。
そういう視点から、よく考えて、ワクチンをうつかうたないか、決める必要があります。

なお、ワクチンの必要性は、そのように、病気のリスクとワクチンの副反応によるリスクを天秤にかけて決めるものですので、あくまでも以上は現時点での意見です。今後、状況により変化するものであることをご理解ください。

蛇足ながら、高齢者の場合はワクチンによる重症化予防効果が明らかに確認されていますし、感染による重症化のリスクは大変高く、副反応のリスクは比較的小さいと考えられますので、高齢者や基礎疾患のある大人の方は、ブースター接種(3回目)を含めてしっかりワクチン接種することをお勧めします。

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