血液型検査
以前には、生まれた病院で血液型を教えてもらうのが普通のことだった時代もありました。
しかし、最近では、赤ちゃんの血液型を調べない(検査しない)病院が一般的です。
赤ちゃんの血液型を検査しない理由の主なものは、生まれたばかりの新生児の血液にはお母さんからもらった抗体(移行抗体)があったり、自分自身の抗体が十分にできていないなど、検査結果が不安定になる要素があり、調べても正確な血液型が出ない場合があるからです。
血液型検査は1歳を過ぎてから行うのが「常識」となっています。
保育園や幼稚園、学校などの書類で、血液型を書く欄があり、外来で血液型検査を希望されることがあります。
理由を尋ねると「緊急時の輸血などに役立てるため」などと説明されることが多いようです。
しかし、医療機関側では保護者が告げた、あるいは過去の血液検査の結果による血液型を鵜呑みにしません。過去には、そういった情報により間違った血液型を輸血してしまった事例(異型輸血)がありますが、ほぼ全ての裁判で医療機関側が敗訴しています。
輸血をする場合は必ず血液型をその場で再検査し、そして、クロスマッチテストといって、もらう側と提供者との血液を混ぜあわせて問題がないかをチェックします。
ですから、事前に血液型を調べておいても、実は医学的には全く何の役にも立ちません。
血液型を知っていて役に立つのは、「血液型占いができる」ことぐらいです。それ以外の意味はほぼありません。
しかし、保育園などの提出書類にどうしても血液型の記載が必要で、書かないと受理してくれない場合は、O型、さらにRh式の記載も必要な場合は-(マイナス)と記載しておくと良いと思います。というのは、上にも書いたように今の日本ではあり得ないことだと思いますが、万が一、その情報だけで輸血を行うことになっても、本人の実際の血液型が何型であれ、O型Rhマイナスの血液であれば、輸血されても大丈夫だからです。
ただ、実際には、空欄にしておいてもまず問題なく受理されます。
そういうわけで、血液型検査「だけ」のために採血をするのは、子供が痛いのに得られる情報の価値が低く、極めてナンセンスです。
当院では血液型検査「だけ」のために採血をするのは基本、お断りしています。
おすすめは、何かの採血の時に「ついでに」血液型検査をすることです。
それなら、少し多めに血液をとるだけで、採血の痛さは全くかわりませんので、お薦めです。
ただし、今からすぐに輸血をする場合を除いて、血液型検査は保険診療は適応されません(自費診療になりますが、例外的に保険診療の時に同時に自費の血液型検査を行うことは認められています)ので、費用負担は発生します。
血液型を調べる機会がなく成長した場合、16歳を過ぎたらぜひ献血しましょう。献血の際には血液型はもちろん、その他の肝炎等の感染症もチェックしてもらえます。