マイコプラズマ肺炎
最近、当院ではマイコプラズマ肺炎の患者さんが増えてきています。
この病気は、肺炎なのですが、聴診器で聞いただけではわかりませんので、診断が難しいことが多いです。マイコプラズマは、気管支や肺胞の外部にある間質という組織で炎症を起こすため、肺炎特有のゼロゼロした音がしないからです。そのため、通常、レントゲンを撮らないと肺炎になっていることがわかりません。
長びくと、炎症が気管支や肺胞にも広がるので、だんだん聴診器で音が聞こえるようになります。
この病気は赤ちゃんから大人まで誰でもかかりますが、特に学童期、つまり幼稚園ぐらいから小学生・中学生ぐらいまでに多く見られます。
また、一度かかって十分な免疫ができてかからなくなるという病気ではないので、何度でもかかります。
飛沫感染で人から人にうつりますが、インフルエンザなどのような強い感染力はなく、すぐ近くの人や濃厚な接触がある人だけにうつるというイメージです。
潜伏期は通常2~3週間と長いです。
マイコプラズマ肺炎を診断するための検査ですが、一般的な血液検査は悪くない(ウイルス性の普通の風邪とかわらない)結果になります。
マイコプラズマを診断するために最も確実な方法は、「ペア血清」といって、症状が現れ始めた頃に採血して、2週間後にもう一度採血して、抗体の上昇を見ます。
しかし、2週間もすれば治療が有効であれば治っていますので、治ってきてから確認だけのために子供に痛い注射をして採血をする・・・というのは実際問題、現実的ではないのと、結果がわかるのが遅すぎて治療方針を決めるためには役に立たないので、通常は、当院のようなクリニックではこの抗体検査はしないことが多いです。
その次に診断精度の高い方法は、LAMP法という検査があります。これは喉を綿棒でこすって、それを遺伝子検査に出す方法です。検査機関に提出する必要があり、結果が判明するまでに数日かかります。
もっと手軽な方法で、迅速検査というものもあります。これはLAMP法と同じように喉を綿棒でこするのですが、それを特殊な試薬を使って調べる方法です。その場で(15分程度で)結果がわかるので便利です。問題は、検出率が抗体検査やLAMP法と比べて低い、ということです。つまり、マイコプラズマ肺炎なのに検査は陰性、ということが起こり得ます。
というわけで、マイコプラズマ肺炎の早くて確実な診断というのはなかなか難しいのですが、症状の経過、つまり、しつこい咳と頑固な発熱があり、熱と咳が続いているわりには元気はわりとあって、聴診器では正常な呼吸音、という症状に、レントゲンでは肺炎の影がある、という場合、さらに上述の検査を組み合わせて、総合的に診断します。
典型的な経過だと判断した場合には、「マイコプラズマの検査」はせずに「マイコプラズマ肺炎でしょう」と診断することも珍しくありません。
治療は、「マクロライド系」という系統の薬になります。
「マクロライド系」の薬の最大の問題点(小児科的に)は、とにかく苦くて飲みにくい、ということです。しかし、かわりの美味しい薬はないので、がんばってのむ必要があります。
最近は、マクロライド系の抗生物質が無効なマイコプラズマが増えてきていますので、効かない場合はニューキノロン系などの他の抗生物質を使うこともあります。こちらもやはり苦味があるのと、下痢などの副作用が出やすいこともあり、まずはマクロライドで、が基本です。
マイコプラズマ肺炎と診断されたら、にがいにがい薬を処方されますが、がんばってのんで下さいね。カプセルもあるので少し大きなお子さんはそちらがオススメです。