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なぜワクチンを接種するのか

投稿者 j_sugimoto 日時 2015年6月6日

できるだけワクチンを打ちたくない、と言われる親御さんが、時々いらっしゃいます。

その気持ちは分からなくはありません。
ワクチンにもデメリット(副反応など)はあります。
しかし、ワクチンに限らず、医療行為というのは全て、メリットとデメリットを天秤にかけて、メリットが大きいと判断されるから行われます。

そもそも何故ワクチンを接種しなければならないのか。

そう質問をされたとき、私はこう答えます。
「子供を死なせないためです」「子供を守るためです」

簡単に言えば、命を守るためにワクチンを接種するのです。

逆に言えば、死なない病気ならばワクチンをうつ必要はないと思っています。
実際に、親御さんから質問された時、ロタワクチンについては「日本に住んでいる限りは、どっちでも良いワクチンかもしれませんね」とお答えするようにしています。
それは、ロタウイルスの感染によって子供が命を落とすことは、日本に住んでいる限りは「非常にまれ」だからです。(ゼロではありません)
子供を保育園に預けて働くお母さんにとっては、ロタワクチンをのんでいる方が「経済的に」損失が少ない可能性が高いです。
でも、言葉は悪いですが、それだけの話です。日本では、命に関わることは殆どありません。だから、特に強くはお勧めしていませんが、ロタウイルスの腸炎は長いと1週間以上吐き下しが続いて入院になることも多いので、命に関わらなくてもそんなしんどいのは嫌だと思うならのんだ方が良いです。というわけで、親御さんに判断してもらって良いと考えています。
乳児期の一定の時期をすぎるとのめないワクチンなので、迷うぐらいならのんでおいたらどうですか、ぐらいに考えています。
もう一つ、子宮頸がんのワクチンに関しては、まだ長期的なデータが少なく、メリット(どれぐらい子宮頸がんが予防できるか)とデメリット(副反応がどれぐらいあるか)がわかりづらいので、積極的にお勧めしていません。これも最終的には親御さんに判断してもらうしかないと思っています。

ロタと子宮頸がん以外のワクチンに関しては、私は積極的に接種をお勧めします。

ワクチンは「しんどい病気にかからなくするため」なんていう生易しい理由ではなく、「死なせないため」に接種するものだ、いうのが私の認識です。

ワクチンのある病気について説明しますと、

・ヒブ
ヒブとは、「ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型:Hib」という名前です。「インフルエンザ菌」という紛らわしい名前がついていますが、インフルエンザとは関係ありません。この菌は、重篤な細菌性髄膜炎や、急性喉頭蓋炎という、死んでしまったり後遺障害が残ったりする病気の原因菌です。

・肺炎球菌
肺炎だけでなく、細菌性髄膜炎などの死んでしまったり後遺障害が残ったりする病気を引き起こします。

・三種混合&ポリオ、あるいは四種混合
百日咳は今の日本でもありふれた病気です。1歳未満の乳児が感染すると呼吸停止を起こして死んでしまうことがあります。
ジフテリアは世界中でワクチンが普及したために患者数は激減していますが、ゼロではありません。かかると致死率が10%ぐらいです。非常に苦しみます。
破傷風は日本でも大人を含めて年間100件程度の発生があります。先進国での発生報告は多くはないですが、これはワクチンが普及しているせいです。発展途上国では正確な統計はないのですが、年間で数十万~100万程度の死亡数が推定されていて、その大多数が乳幼児です。
ポリオも世界的なワクチン接種で激減はしていますが、未だに常在国も存在します。死亡したり、命は助かっても麻痺が残ることが多い病気です。

・BCG(結核)
乳児が結核に感染すると高確率で結核性髄膜炎などの全身感染を引き起こします。非常に重篤で、死んだり後遺障害が残ることも多い病気です。
また、結核を患っている人は案外、多いです。乳児がどこで結核菌をもらってしまうかわかりません。

・B型肝炎
慢性肝炎を発症するといずれは肝硬変そして肝がんへ進展します。
また、幼少時に感染するとキャリアとなり他の人、特に愛する人に病気をうつしてしまう可能性が高くなります。
成人期に感染すると劇症肝炎を発症して死んでしまうことも多い病気です。

・MR
とくに麻疹は、かなりの頻度で脳炎や重篤な肺炎を引き起こします。死ぬことも多い病気です。
風疹は、妊娠中にかかってしまうと、お腹の中の赤ちゃんが死んだり重篤な障害をもって生まれたりします。

・水痘
あまり怖がられない水痘ですが、まれに脳炎を引き起こします。

・おたふく
おたふくには髄膜炎や脳炎の他、様々な合併症がありますが、中でも頻度が高くて厄介なのが難聴です。
この難聴は一生治りません。後遺障害として残ります。

・日本脳炎
読んで字のごとく、脳炎を起こします。
脳炎になれば死ぬか、助かっても後遺障害が残る可能性が高いです。

・インフルエンザ
風邪の一種ですが、重症化すると肺炎や脳炎・脳症、心筋炎などを引き起こします。
毎年多くの方が命を落としています。

・子宮頸がん
20~30代女性の患者・死者が急増しています。

以上、詳しくは、当院のホームページからもリンクを貼っています「KNOW☆VPD!」のサイトもぜひ読んでみて下さい。

死ぬ病気だからこそ、あるいは重い障害が残る病気だからこそ、必死でワクチンを開発するのです。また、政府や地方公共団体がどこも赤字で苦しんでいる中で、それでも公費で接種してくれるのです。

上で書きましたロタウイルスなどは、医療の整った日本ではまず死ぬことのない病気ですが、医療水準が低く衛生状態の悪い途上国では日々たくさんの乳幼児が命を落としています。

だからワクチンが開発されたのです。

繰返しになりますが、もう一度書きます。
何故ワクチンを接種しなければならないのか。
それは、子供の命を守るためです。