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処方箋の期限にご注意

投稿者 j_sugimoto 日時 2015年6月5日

今回は、処方箋の期限についてのお話です。

保険診療の処方箋には、有効期限があります。交付の日を含めて4日以内に保険薬局に提出すること、と定められています。
繰り返しますが、処方箋の期限は「交付の日を含めて4日」です。ということは、交付の日から3日後まで、ということになります。この日数には、土日祝日も含まれます。

その日の内に薬局に行けず、次の日に行こうと思っていたら忘れてしまったりする場合はあると思います。
また、金曜日に受診して、来週早々に取りに行こう!と思っていたとします。月曜日が祝日だったりすると、その処方箋の使用期限は切れてしまいますね。

期限が切れた場合、簡単に再発行できると思っておられる方が多いようなのですが、実はこれは、大変困ったことになるのです。

昔は、「疑義照会」といって、薬局から、電話で「期限切れの処方箋を持って来られていますが、期限を延長して良いですか?」と医療機関に問い合わせて、医療機関(主治医)が「良いですよ」と答えれば、有効な処方箋として調剤が出来る、という時代がありました。実はこの時代でも、本当は(保険のルール上は)ダメだったんですが、かなり大目に見てもらえていたわけです。
しかし、当たり前に期限切れの処方箋を薬局に持ってきて「電話してよ、延長できるんでしょ」という患者さんが増えたせいか、あるいは他に理由があるのかはわかりませんが、数年前に、明確に「それはダメです。正しく保険のルールを守りなさい」という通達が出されたため、処方箋の期限を延長することはできなくなりました。
「有効期限が切れた処方箋はただの紙である。その紙について疑義照会を行っても何の意味もない。」
「患者の利便を図るという名のもとに、脱法行為を行っている。」
というのが厚生労働省の見解らしいです。

ではどうするか、というお話ですが、「じゃあ病院・医院に行って再発行をしてもわらないといけないのか。めんどくさいな」というのが、患者さんが考える次のステップだと思います。
しかし実は、これもできません。
一度の保険診療で発行できる処方箋は1枚だけです。(薬の数が多くて処方箋の用紙に入りきらずに紙の枚数が2~3枚になることはありますが、それは1セットなので1枚と考えて下さい)
そう決まっていますので、診察をせずに「再発行」は、できません。

というわけで、また処方箋を発行するためには、「新たに受診」して、「あらためて(「再発行」ではなく、新しい診察に基づいて新しく)処方箋の交付を受ける」必要があります。それには当然、診察料もかかります。

そして、そこから先も、まだ厳しい話が続きます。保険のルールを厳格に適用すると、新しい処方箋の発行を受けるために、新しく診察を受け直したとしても、それは本来は保険診療としては認められない可能性があるのです。
認められるか認められないかは実は保険のルール上、明確な規定はないのですが、かなり黒に近いグレーであることは確かです。
病状が変化したから再度診察を受けるのは全く問題ありませんが、「処方箋の期限が切れたから新しい処方箋が欲しい」というのは本来の保険診療のルールからは逸脱している、ということです。
ですから、保険診療として認められません、と審査で判断されても文句を言えません。

以上から、「絶対に法的に問題のない方法」は、「自費で診察を受けて、自費で新しい処方箋の交付を受けて、薬代も全て自費で支払う」ということになります。それなら全く問題ありません。ただし大変高額になります。

長々と書いてしまいましたが、保険診療の場合の処方箋の期限切れというのは、上記のように様々な問題を抱えているため、我々医療機関も薬局も、そして保険の審査をする人達も、大変な思いをすることになります。
保険診療というのは、様々なルールが存在して、その中で行われているものだからです。7割あるいはそれ以上を公費で出してもらうのですから、ルールに縛られるのはやむを得ない、とも言えます。
処方箋を交付されたら、可能な限り速やかに、保険薬局に提出して下さいね。

参考までに説明しておきますと、有効期限の「4日間」というのは、あくまで、保険薬局に提出するまでの期間ですので、とりあえず薬局に処方箋を出しておいて、数日後に薬を受け取りに行く、ということは(薬局さえそれで良いと認めてくれれば)問題ありません。