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咳止め

投稿者 j_sugimoto 日時 2015年8月30日

咳がひどい時、あるいは咳が続く時、「咳止めが欲しい」とよく言われます。
お子さんの咳がひどければ、その咳を止めて楽にしてあげたいと思うのは当然のことです。お気持ちはとてもよくわかります。

しかし、ここで、咳はなぜ出るか、を考えてみましょう。

咳は、のどや気管支といった空気の通り道である「気道」の中の、不要なものを取り除こうとする体の反応として出るものです。
不要なものとは、細菌やウイルスといった病原体、傷んでしまった気道の粘膜、誤って気道に入ってしまった異物、出すぎた痰や、鼻からのどや気管に流れ込んだ鼻水などです。ということは、咳がでるからといって、「必要以上に」止めてしまうと、不要なものを取り除こうとする力を邪魔することになるので、悪化したり気管支炎や肺炎などの合併症や2次感染を招く原因になったりします。
喘息などの場合には、痰が溜まってしまうので、症状がより悪化して重症の発作を起こしたり、無気肺という痰が詰まって空気が入らない部分ができてしまったりして、危険です。このため、基本的には「咳止め」は不必要な薬と言ってもよいでしょう。

痰がひどいときや、痰の切れが悪くてひどく咳が出る場合には、痰切りの薬で痰を出しやすくすることで、結果的に咳が減ることが期待できます。痰の切れが悪くて何回も咳を繰り返していたのが、痰の切れが良くなれば、痰を出すための咳が少なくて済むからです。あるいは、喘息が原因で咳が出るのであれば、気管支拡張剤という気管支を広げる作用のある薬や、気管支の炎症を取る薬などの、「喘息の薬」で症状を緩和することができます。肺炎や気管支炎などが咳の原因なら、原因となっている肺炎・気管支炎などの治療が重要です。
つまり、咳に対しては、咳止めで咳を抑えようとするのではなく、咳の原因を改善あるいは根治する薬で治療を行うことが基本です。
咳止めは、のむとしても、過剰に(必要以上に)出ている咳を少しマシにする程度の軽い咳止めだけにするのが良いのです。病気の原因にアプローチしない「咳止め」の薬はあまり効きませんし、もし効いても必要な咳が出せずに病態を悪化させてしまうことになりますから、やみくもに強い咳止めをのむことは避けるべきです。

当院では、「咳止め」は害のない程度にしか処方しませんので、あまり効かないかもしれませんが、上記のように、咳に対しては、咳止めで無理に咳を止めることよりも、「咳の原因をしっかり見極めてそれに対して治療を行うこと」や、「合併症や2次感染を起こしていないかしっかりチェックすること」が特に大切であることを、ご理解下さい。

薬の他には、痰の絡みを改善するために水分をしっかりとることや、空気の乾燥を避ける(空気が乾燥していれば加湿する)ことも、咳に対して有効なことがあります。
熱がなければお風呂に入ることで、体が温まり喉も加湿されますから、咳が減ることがあります。